【完】DROP(ドロップ)



途中、陳列中の商品を置きっぱなしな事を思い出した。



「ごめん、やってから休憩するね」



そう言うあたしの隣で、陳列を一緒に始めてしまった巧。



「一緒にやった方が早いだろ?」



って、優しい笑顔を向ける。



そんなに優しくしないで?


今、そんな事されたら泣いちゃいそうになる。

止めていた涙が溢れちゃいそうになるんだから。



ぼやけた視界に気付いたあたしは



「ありがとー」



って言いながら、黙々と商品を並べた。



これ以上、何か話すと頬を伝ってしまうだろうから。


でも、それは巧の前で流してはいけない涙。


自惚れてるかもしれないけど、今泣いたら巧は絶対心配すると思う。

もし、あたしが逆の立場ならそうだろうから。



だから、泣かない。



泣けないんだ。



付き合う事、好きになる事を選べなかったんだから。

何も巧にしてあげれないんだから、何もして貰っちゃ駄目なんだ。




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