【完】DROP(ドロップ)



「ほら」



休憩室の椅子に座ると、差し出されたジュースを受け取った。



「ありがと。あ、お金」

「今日は、俺の奢り。また今度何か奢れよー」



えー!

と文句を言いながらも、こんな風に些細な事に気遣ってくれる。


奢る、それだけなら駄目だよってお金を渡しちゃうもんね。


だから“また今度”って言う条件付きで。



今度。
また。



は、簡単な言葉なんだよね。


絶対、ではないけど、期待、はある。


だから、あたしは圭矢の

『また電話する』

にいつも期待を抱いてしまうんだ。



淡い淡い期待を……ね。



でも、次かかってくる電話は。

鳴り響く携帯は。



――別れ



になるかもしれないから。

あたしにとって、またも今度も簡単な言葉じゃない。



「なぁ、雫」

「んー?」

「しつこいかもなんだけど……」

「うん?」

「やっぱ、何かあっただろ?」



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