【完】DROP(ドロップ)



「なぁ!」



店内から外へと出て、ドアが閉まった瞬間。


いきなり、ガバッと振り返えられ、ボーッとしていたあたしは、巧の胸にぶつかってしまった。



「いったぁい……」

「あ、わりぃ。って、大丈夫かよ?」



涙目になったあたしは、鼻を押さえて巧を見上げる。


巧は心配そうに見下ろし、鼻を押さえる手を掴んで鼻を見て笑った。



「ぶっ。赤くなってんぞ」

「巧が、いきなり振り返ったからじゃない。いたーい」



本気で痛がってるのに、笑うってどうなの?



「もー。手離してよー」



鼻をさすって少しでも痛みを和らげたい。


そう思って言ったのに。

それだけで言っただけだったのに。



「……それって、触られたくないって意味?」



え。



言ってる意味がわからなくて首を傾げた。


今まで笑ってたのに、急に真剣な顔。

わからなかった意味は、すぐに答えが出た。



< 248 / 374 >

この作品をシェア

pagetop