【完】DROP(ドロップ)
「なぁ!」
店内から外へと出て、ドアが閉まった瞬間。
いきなり、ガバッと振り返えられ、ボーッとしていたあたしは、巧の胸にぶつかってしまった。
「いったぁい……」
「あ、わりぃ。って、大丈夫かよ?」
涙目になったあたしは、鼻を押さえて巧を見上げる。
巧は心配そうに見下ろし、鼻を押さえる手を掴んで鼻を見て笑った。
「ぶっ。赤くなってんぞ」
「巧が、いきなり振り返ったからじゃない。いたーい」
本気で痛がってるのに、笑うってどうなの?
「もー。手離してよー」
鼻をさすって少しでも痛みを和らげたい。
そう思って言ったのに。
それだけで言っただけだったのに。
「……それって、触られたくないって意味?」
え。
言ってる意味がわからなくて首を傾げた。
今まで笑ってたのに、急に真剣な顔。
わからなかった意味は、すぐに答えが出た。