【完】DROP(ドロップ)
「雫、知り合い?」
不思議そうな巧の声が聞こえた。
圭矢だけを見つめていた目線を巧へ向けて。
初めて瞬きをした。
あたしの瞳いっぱいに溜まった涙は、大粒の雫になり頬を伝う。
「え!? どうしたんだよ?」
それを見て目を見開いて驚く巧。
ううん、と顔を大きく横へ振りバッと圭矢を見上げた。
これは夢?
何でここにいるの?
何しているの?
沢山の言葉が頭の中をグルグルと回ったけど、それよりも。
バレる!
芸能人“KEI”だとバレてしまう。
そう思って焦った。
何度も何度も、圭矢と巧を見る事しか出来ない。
深くキャップを被った圭矢は、パーカーの帽子を上に被っていた。
まだ巧は気付いていないはず。
このまま帰ればバレないかもしれない。
だけど、足が動かなくて。
巧に何て言えばいいのかすら、わからない。
どうしょう。
どうしょう。
どうしょう。
思い浮かぶのは、そればかり。