【完】DROP(ドロップ)
「笑わないでくれる?」
「あ、ごめん」
「だって、雫が来ないって言ったの初めてだったから」
あ。
圭矢も気付いてたんだ。
あたしが初めて断った事を。
「だから、アイツと何かあるのかなぁって思って…」
弱くなる語尾と、少しずつ染まる頬。
アイツは、巧の事かな?
あぁ、だからか。
巧と何かあったから、あたしが来ないって思ったんだ。
違うよ、圭矢。
違う……。
「今日ね、見たの」
「え?」
「杉下奈央さんが、圭矢の部屋に行くのを」
「え!?」
凄く驚いた顔をした。
今ね、あたし凄く幸せな気持ちなんだ。
圭矢がヤキモチ妬いてくれたり、バイト先にまで迎えに来てくれたり。
夢みたいな時間を沢山過ごせて。
ねぇ、やっぱり夢だった。
って誰かがあたしを起こすかなぁ?