【完】DROP(ドロップ)
もし、杉下奈央さんとの事が本当だったら、何かあったって言われたら。
あたしは、どうするんだろう。
これ以上、言わない方がいいのかな。
聞かない方がいいのかな。
もし、出来心だった。そう言われたら、あたしは許せるのかな。
圭矢を、もう一度信じれるのかな。
それよりも、バレたなら
『別れて』
そんな風に話が流れてしまったりしない?
あたしは俯いたまま黙ってしまった。
それ以上を聞くのが恐い臆病者。
聞かなきゃ前に進めないのに。
こんな中途半端な聞き方しておいて、この話を放置する事なんて出来ないのに。
聞けないなら、こんな話するんじゃなかった。
聞く勇気もないくせに、言うんじゃなかった。
「雫……もしかして、俺が電話した時?」
それ以上、言えないあたしの言いたい事を言ってしまったのは圭矢だった。
静かに頷いた。
時計の針の音だけが聞こえる部屋に、あたしの心臓の音が漏れるんじゃないかな。
それくらいに、そのまま黙ってる圭矢の沈黙が恐かった。
何て言うんだろう。
それに、何て返事すればいいんだろう。
ドキドキドキドキドキ……
胸は痛い位に鳴り響き。
手には汗までかいてきた。