【完】DROP(ドロップ)



圭矢が立ち上がっただけなのに、ビクッとしてしまう位に緊張していたんだ。

それを見て、フッと笑った圭矢は、携帯を取りどこかへかける。



「あー、俺。今から部屋来てくんない?」



え。



驚いて顔を上げた。

誰を呼ぶの!?



「いいから、来い。すぐに。あ、奈央もね」



えぇぇ。



奈央もね。って……!

来るの?
今から!?



あ……。



“奈央”



今、奈央って言ったよね?



奈央って、杉下奈央さんの事……だよね。

呼び捨てなんだ。




携帯を乱暴に置くと、はぁーっと大きな溜息をついた。


唇が乾く。

見上げた圭矢は、真っ直ぐにあたしを見詰めてて。

その目を真っ直ぐに見れなくて、目が泳いだ。




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