【完】DROP(ドロップ)
「圭矢、あ、あたし帰った方がいい、よね?」
かっこ悪い。
声が震えた。
だって杉下奈央さんを呼ぶって、何で?
「いいよ、ここに居て」
「でっ、でも。来るんでしょう? 杉下奈央さん」
「うん、呼んだよ」
「じゃあ……っ」
「わかるから。来たらわかるから待ってて」
強く言い放った言葉に何も言えず黙った。
その時、
――ピンポ、ピンポ、ピン、ピン、ピンポ……ピンポーン♪
連打で押すチャイムに、顔を上げたあたしと呆れた顔をした圭矢の目が合った。
「おーいっ! けっいしくーん」
――ドンドン
とドアを叩きながら、まるで小学生が友達を誘うかのような呼びかけ。
へ?
玄関の方へと向いたあたしは困惑した顔をして、圭矢を見直した。
大きな溜息を零して、玄関へと向かうのを、ただ見つめるしか出来なかった。