【完】DROP(ドロップ)
少しして、抱き合ってる俺達に気付いた陸は、やっぱり空気なんて読めなくて
「あれ? 雫ちゃんどうしたの?」
なんて、不思議そうに聞く。
それに気付いたんだろう、俺から離れようとした雫。
だけど、抱きしめた手は緩めない。
せっかく。
せっかく雫から抱きついて来てくれたんだから。
離すわけがないよ。
陸を睨んだ俺に、何か言い換えそうとして大きく口が開いた瞬間、後から奈央に口を抑えられた。
んがんが、と声にならない声を出して暴れる陸を引きずる様にして部屋を出て行ってくれたんだ。
雫は、俺の服を濡らすぐらいに涙を流して。
時折、俺を呼ぶ声が愛しくて。
それは全部、俺のものなんだよね。
全部、俺の為なんだよね。
全部……俺だけの事を考えて、なんだよね。
泣き止んだ雫が少し残念で、素直に言ったら不思議そうな顔を見せた
。
だって、泣いてる雫は凄く可愛いんだから。
でも、そんな事を言ったら、また怒られるだろうし秘密にしておこう。