【完】DROP(ドロップ)
ねぇ、雫。
そんなに簡単に俺から離れないでよ。
雫に近付くのに、どれだけ時間がかかるかわかってる?
俺達は、付き合って長いのに、まだ俺は雫に慣れないんだよ。
離れた雫との少しの距離が寂しくて。
ちょっとの隙間が冷たいんだ。
そっと、近付くと腕を回し、
「嘘だよ」
と囁いた。
「ちょっと意地悪したくなった」
ごめんね。
可愛い雫が見たかったんだ。
喜こんだり、怒ったり、哀しんだり……笑ったり。
色んな雫、全部が可愛いって本当思うよ。
こんな事、恥ずかしくて絶対言えないけど。
「本気で心配した」
でも、その顔を他の男に見せるのかって思ったら、不安でたまらなかったんだ。
俺だけに見せるその顔が、他の誰かのものになるなんて、考えただけで不安で不安で、心臓が潰れるかと思った。