【完】DROP(ドロップ)
雫の彼氏が、芸能人のKEIだったなんて。
初めは、付き合ってる奴と上手くいってないんだと思った。
KEIが好きだったって知って、その代わりに他の奴と付き合ってるんだと思った。
だから、そいつと上手くいってないんだって思った。
それなら……。
雫が、これ以上泣くんなら奪ってやろうと思った。
俺が圭矢の代わりになってやろうって思った。
だけど、俺の“思った”事は、全部間違ってたんだ。
『駄目……雫だけは駄目』
芸能人がこんなとこまで来るなんて正気じゃねぇよ。
俺はKEIは歌番組でしか観た事ない。
ツンってしてて、どこか冷めた目をしてる、そんな印象だったのに。
あんな風に感情を出して、あんな顔をするなんて。
それ位、本気なんだよな。
だから、俺じゃ駄目なんだ。
俺じゃ、KEIの代わりなんかになれるわけがない。
雫にはKEIじゃなきゃ駄目で。
KEIは雫じゃなきゃ駄目なんだ。
俺は、ただの邪魔者だったんだ。