【完】DROP(ドロップ)
「巧。 今日どうして来なかったんだよ?」
菜摘さんを送り戻って来た松本が俺に声をかける。
ベットに倒れ込んだままの俺は、何の返事もしなかった。
まだ、さっきの雫の涙が忘れられなくて。
女って好きな男の前では、あんな風に泣くんだって。
その顔が頭から離れない。
俺の為にして欲しかった顔は、俺のものじゃなくて。
“KEI”のものなんだよなぁ。
そんな事を思いながら松本が一人話す言葉を聞いていた。
「ちょっと聞いてんのかよ!?」
あまりに返事をしない俺に苛々した声が飛ぶ。
「んー……」
「何かあったのかよ?」
少し心配そうな声と、キィッと松本の座っている回転椅子が動く音。
ベットに埋めた顔を向けると、さっきよりもベットへ近付いていた松本が
『どうした?』
そう聞いて来た。