【完】DROP(ドロップ)



「お邪魔しましたーっ」



急いで靴を履いて、玄関を出る瞬間、松本の母ちゃんに言った。



ドアが閉まり、少し涼しくなった夜風が夏が終わろうとしているのを知らせる。



俺、今日凹んでたのになぁー。

なんて、さっきまで思っていた事を思い出した。

んっと。
あの兄弟には参る。



「巧ちゃーん!」



パタパタと可愛い足音と共に、俺のそばへと駆け寄ってきた鈴ちゃん。

立ち止まった俺は、ゆっくりと振り返った。



「どうした?」

「巧ちゃん、失恋したんだよね?」

「また、その話?」



鬱陶しそうに答える俺に、頬を膨らませて睨む。

その顔を見て、懐かしさでフッと笑みが零れた。


鈴ちゃんは、昔から拗ねると少し頬をピンクに染めて頬を膨らますんだ。


理由は簡単で。

仲間に入れてもらえなかったとか。
お菓子を取られたとか。
仲間外れにされたとか。

ま、全部。
松本絡みなんだけど。



「馬鹿にしてるでしょーっ」



膨れた頬がもっと膨らむ。

眉間に皺まで寄せた鈴ちゃんを見て、頭をポンポンと撫でた。



「もう元気出たし、大丈夫だから」



そう優しく微笑んだ。




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