【完】DROP(ドロップ)
【番外編】-drop story-陸
*:.。.番外編-陸.。.:*
ガンガンと鳴り響く音楽。
甘ったるい香水の匂いに、煙草とアルコールの香りが混じる。
「陸、次はいつ会える?」
カランッとグラスに入った氷が溶け、音を鳴らした。
残りのジン・トニックを飲み干すと、少し水っぽい。
渋い顔をした後、隣で露出度たっぷりの彼女に笑顔を向けた。
「あ、ごめんね。マイちゃん仕事忙しいから、わかんねーや」
両手を合わせ、謝る俺に
「私は、マ、ナ、です!」
と、ご立腹のご様子。
ごめん、ごめん、と何度も謝り頬にキスしてクラブのVIPルームを後にした。
「陸、ほどぼどにしねーと刺されっぞ」
「えーっ、痛いのやだー」
このクラブのオーナーでもある秋人(アキト)に、大袈裟に言ってみると呆れた顔を見せた。
俺は昔から、こんなで。
女癖が悪いのは父親似で、性格が軽いのは母親似。
別にこれで困った事なんてなく、敢えて言うならば得している位。
毎日楽しく遊んで、綺麗な女の子と過ごして、いい人生じゃん。
仕事も、モデルから歌手、最近じゃバラエティー番組にも出ちゃうくらいに上手くいってる。
クラブから外に出ると、中の煙った空気とは違う春の匂いがした。
ふんわりと温かい風が、優しく俺の肌を擽る。