【完】DROP(ドロップ)



ニヘッて笑った俺は、勿論奈央ちゃんからのキツーイ一発を貰ったわけで。



しかも『馬鹿』って何回言われた事か。



でもさ、今まで遊んで来た女の子達の事も好きだった。

可愛いって思った。

女の子達だって、俺の事を好きって言ってた。



だから“好き”って意味がよくわからない。



「陸って、遊んでたわりにはすぐ赤くなったり、恥ずかしがったり、変よね」

「え? あ、そっか。それだわ、奈央ちゃん!」

「はぁ?」



怪訝な顔をする奈央に、満面の笑みの俺。



だって、わかったんだ!
好きって意味が。



「俺、奈央ちゃんが好きみたい!」

「……何よ、その“みたい”って」



何か俺の言う一言一言、怒られてる気がするんだけど。



「だから、俺。今までドキドキしたり、顔が赤くなったり、恥ずかしくなったりした事ねーもん。
でも奈央ちゃんにはするし、笑ってくれると嬉しいって思う。
これって俺、奈央ちゃんが好きじゃね?」



子供が問題を正解した時みたいな笑顔だったと思う。

だって、それ位わかった事が嬉しくて。



「もしかして……陸って、人を好きになった事がなかったの?」

「へ? 好きだよ、皆」

「じゃなくてっ! ……って、もういいわ。何か頭痛い」

「大丈夫? 薬買ってこようか?」



こめかみを押さえ、うな垂れる奈央ちゃんは、俺を見てまた

『馬鹿』

って呟いたんだ。



< 368 / 374 >

この作品をシェア

pagetop