【完】DROP(ドロップ)
ニヘッて笑った俺は、勿論奈央ちゃんからのキツーイ一発を貰ったわけで。
しかも『馬鹿』って何回言われた事か。
でもさ、今まで遊んで来た女の子達の事も好きだった。
可愛いって思った。
女の子達だって、俺の事を好きって言ってた。
だから“好き”って意味がよくわからない。
「陸って、遊んでたわりにはすぐ赤くなったり、恥ずかしがったり、変よね」
「え? あ、そっか。それだわ、奈央ちゃん!」
「はぁ?」
怪訝な顔をする奈央に、満面の笑みの俺。
だって、わかったんだ!
好きって意味が。
「俺、奈央ちゃんが好きみたい!」
「……何よ、その“みたい”って」
何か俺の言う一言一言、怒られてる気がするんだけど。
「だから、俺。今までドキドキしたり、顔が赤くなったり、恥ずかしくなったりした事ねーもん。
でも奈央ちゃんにはするし、笑ってくれると嬉しいって思う。
これって俺、奈央ちゃんが好きじゃね?」
子供が問題を正解した時みたいな笑顔だったと思う。
だって、それ位わかった事が嬉しくて。
「もしかして……陸って、人を好きになった事がなかったの?」
「へ? 好きだよ、皆」
「じゃなくてっ! ……って、もういいわ。何か頭痛い」
「大丈夫? 薬買ってこようか?」
こめかみを押さえ、うな垂れる奈央ちゃんは、俺を見てまた
『馬鹿』
って呟いたんだ。