【完】DROP(ドロップ)
ドキドキドキドキドキ……。
今朝は、冷たい風が肌に感じないくらいに穏やかに晴れた日。
いつもは走る道だって、ゆっくり歩いてもまだ早い位の時間。
準備は万端。
朝から、いや昨日からドキドキと高鳴った胸は未だ落ち着きを取り戻さない。
『やれるだけの事はやったんでしょ、頑張れ!』
今朝来た菜摘からのメールを見て、ホームに着いたあたしは大きく深呼吸。
あ、圭矢だ!
人込の流れに乗ってやって来た大好きな人。
今日もいつもと変わらない。
だけど、いつもよりかっこよく見えるのはバレンタインって日だからかな?
よーし! そう気合を入れたのが拍子抜けしてしまった。
あたしが声をかけるよりも早く、女の子2人が圭矢の前に立ったんだ。
遠くて声は聞こえないけど、女の子の手にはラッピングされた箱。
チョコだ。
こんな日に、バレンタインの日に、それ以外あるわけがない。
やっぱりこのホームでも、あたし以外に圭矢の事を好きな子はいたんだ。
そう思うと不安はドンドン大きくなる。
絶対、告白するよね、してるよね!?
それOKしちゃうのかな。
さっきのドキドキとは違う、不安なドキドキ。
だけど、彼女でも何でもないあたしは、それを見ることしか出来ない。