【完】DROP(ドロップ)
「じっ、実はね……」
「安藤君!」
あたしが鞄の中から取り出そうとしたチョコ。
同時に後から聞こえた声。
その声に、あたしも圭矢も一緒に振り返った。
また女の子。
あたしの事をチラチラと見ながらも手にしたチョコレートを差し出した。
「あの、ずっと好きだったんです。良かったら付き合ってもらえませんか?」
ただ見ているだけのあたし。
「ごめんね、誰とも付き合う気ないから」
あたしに言う答えと同じ。
「じゃあ、チョコだけでも…」
「悪いけど、誰のも受け取る気はないんだ」
差し出されたチョコレートが行き場をなくす。
その女の子はチョコレートを胸に抱えると
『わかりました』
と、走って行ってしまった。
チラッと、あたしに視線を落とした圭矢。
何だか、目を合わせていずらくて、2度3度視線をずらしてしまう。