【完】DROP(ドロップ)



「……雫は誰とでも付き合うの?」

「え。いや、そういうわけでもないんだけど。ほ、ほらっ! 付き合ってみてわかる事ってあるじゃない」


焦るあたしに、圭矢の冷たい視線。



「どうして付き合いたいって思うの?」

「そりゃ……好きだからだよ?」

「それは雫が。でしょ? 俺が……雫が知らない男に告白されて好きでもないのに付き合うの? って聞いてるんだけど」

「それはっ!」



そうか。


あたしが、圭矢を好きだから圭矢と付き合いたいなって思うんだ。

圭矢は、あたしが好きじゃないから……断るんだよね。



「そっか。そうだよね」

「雫?」



覗き込む圭矢に、ニッコリと笑って返す。



「好きでもない子と付き合わないのは、圭矢の優しさなのかもね」



真顔になった圭矢は、



「雫?」



ってあたしの名前を呼ぶ。




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