【完】DROP(ドロップ)
ねぇ、圭矢。
あたし、好きになってもらえなかったって事だよね。
鬱陶しいくらい毎朝待ってたけど、もしかしたら……なんて淡い期待を抱いていたけどね。
やっぱり鬱陶しいだけだったんだよね。
「ごめんね、圭矢。あたし、もう止めるね!」
「え?」
「朝待ったりって、あたしはストーカーか! って感じだよねー」
「雫?」
「うん、わかってる! 何回も振られてるしさ。いい加減にしなきゃなーって自分でも思ってたんだ。でも今、圭矢の話聞いて、踏ん切りついたって言うか……なんて言うか」
「ちょっ、雫」
「圭矢! 今までごめんね!」
そう言って、タイミングよく来た快速電車に飛び乗った。
いつも圭矢と居たなら、見送る快速。
『雫、この電車の方が楽でしょ?』
そう言われる度に、快速なんて来るなー!
そう思っていたのに、今日は有難いよ。
プシューと音をたてて閉まるドア。
窓から見た圭矢と合った目を、そのまま逸らせなかったんだ。