【完】DROP(ドロップ)



「ねぇ、もう卒業なのに……本当にいいの?」



何度も同じセリフ。

それに、あたしは少し視線を落として頷く。


一体、何度同じ事を繰り返したんだろう。


あたしを覗き込む菜摘は、哀しそうに笑いながら



「今のままじゃ後に引きずるんじゃない? スッキリしてないでしょう?」



そう言うけど、あたしは何も言えなくて。



「……まぁ、最後は雫が決める事だもんね。ごめんね」



持っていたジュースをズズッと啜り、ゴミ箱へと捨てに行った。



あたしが朝、駅で待たなければ圭矢とは会わない。

携帯番号もメアドも、連絡を取れる手段なんてひとつもない。



それだけの関係。



あたしが、会いたいと思っても。

あたしが、会いたくないと思っても。

どちらも同じ。

圭矢は、自分の出る時間に家を出て、着た電車に乗る。

変わらない毎日。



――ただ、あたしがいない。



それだけなんだよ。



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