【完】DROP(ドロップ)
「しーずーくーっ!!!」
学校へ着くなり、あたしの名前を大声で叫びながら走ってくるのは勿論、
菜摘。
そして、手には予想通りの“雑誌”
「ちょっ! これみた!?」
はぁはぁ、とこの短い距離で息切れし、目の前に差し出した雑誌は軽く震えていた。
それと同じものが鞄の中にあるよ、菜摘。
心の中で思いながらも、あたしは
『うん』
とだけ頷いた。
「みたの!? 圭矢君から聞いてたの? てか凄くない!?」
「……凄いよねぇ。って、ちょっと落ち着けば、菜摘~」
実は、圭矢との事を、まだ菜摘に言っていない。
言おうと思った時に、グランプリを取ってしまって。
そして事務所との契約。
漏れたら困るから誰にも言わないでね。
そう言われたから、菜摘にも言えないまま“今日”になってしまっている。
だって、菜摘に付き合ってるって言ったら……
絶対回りに言っちゃうだろうし。
だからって、デビューするって聞いたんだけど事務所との契約もあるし言わないでね。
だけ言えないし。
今じゃ、いつ言っていいかわからないタイミング。