ハロウ、ハロウ
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18年前。
初めて君にあった。


母親の後ろから此方を見ながら、女の子の様子を伺っている君に、


「一緒に遊ぼう」


と声をかけた。


「わたしは鞠子っていうんだよ」

「ぼくは××だよ」


こうして、手を繋いで公園のブランコに走って行った。


「仲良くなれそうですわ」


××の母親は鞠子の父親に歩み寄った。


「心配は無さそうだね」


二人は××と鞠子からは死角になる滑り台の陰まで行くと、両手を繋いだ。


「ねぇ、奥さんは何時別れるって?」

「まだ渋ってるよ。――いざとなったら無理にでも別れるよ」

「別れたら、私と……」


鞠子の父親はクスリと笑って、××の母親の唇を塞いだ。
それは鞠子の父親も喋れなくなる方法で、










「…………ぱぱ」










偶然見ていた鞠子にはショックな光景だった。



「ねぇ、ぱぱ」


夕方の帰り道。
鞠子は父親と手を繋いで帰路についていた。


「なぁに?」

「なんで××のままとちゅーしてたの?」

「………っ」

「鞠子のままはきらいになったの?」






鞠子の父親は決意した。

娘を傷付けないようにと。






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二ヶ月後

ひとりの女が自殺した。



シングルマザーで、息子が一人居た。
恋人に捨てられ、失意の果てに自殺した。

彼女は、恋人の名前は、誰にも教えてはいなかった。



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