ハロウ、ハロウ

「母さん、おはよう」

「おはよう。ねぇ、百合子まだ降りてきてないの。―――大丈夫かしら」

「……………」


母さんは腰に両手を当てて、鼻から盛大に息を漏らした。

そして食卓についた私を見た。

此れは間違いなく「様子見て来なさい」の視線なんだが。
正直、さっきの事もあるし、百合子とは顔を合わせたくない。


「ねえ」

「はいはい行きますよ」


母さんに急かされるのが嫌で、私は母さんの言葉を遮って椅子から立った。








……………ぁぁあぁ……


……………ぁぁああぁ……







……………痛いよ…









…………痛いよぉ……









「百合子?」


百合子の部屋のドアノブを掴んだまま、私は硬直した。

呼び掛けても応えは無い。
聞こえるのは









……ぃひ…っ…たい……








………痛いぃ………






百合子のうめき声だけだった。
まるで死にそうな、腹の底から凍りつきそうに悲痛なうめき声。

なのに、私はドアノブを捻れなかった。
開けたくない。

百合子が心配だ。
開けて無事を確かめたい。
でも





なんだ、この恐怖





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