お稲荷様のお呼びです!
外の部活の生徒達の声がよく響いて聞こえてくる。
時折すれ違う友達に手を振りながら、頑張れと声をかける。
そんな中を正門に向かって歩いていると、何やら騒がしい。
「喧嘩?」
「さあ……巻き込まれたくないね」
ひーちゃんがその騒がしい人だかりを避けながら、前へと進んでいく。
遠巻きに眺めながら、ひーちゃんに続いてその横を通り過ぎようとした。
「童!」
そう聞こえて私の体は思わず反応してしまう。
だって、こんな風に私のことを呼ぶ人を知っているから。
いや、あの人はヒトじゃなくて……
「まったく……お前ここで呼ばれたいのか!」
考えるよりも先に体を動かして、その声の主の元へと駆け寄った。
学年関係なしに生徒に囲まれた神様。
なんでこんな所にいるのかがわからない。
それもいつも見るあの姿じゃなくて、ちゃんとした人間の姿。
灰色がかった髪と瞳の色が少しだけ浮くけど、フワフワした尻尾も耳もない。
遠目から見たらモデルさんが撮影しに来たそんな感じにしか見えない。
相変わらず整いすぎてて怖い。
ってなんでなんで……嘉さんがここにいるの?!
口を開きかけると、嘉さんを囲む子達の視線が一気に私に集まる。