お稲荷様のお呼びです!
ま、まずい。
このままだと変な噂が流れちゃうかもしれない。
ここは演じなきゃ、そう。
カモフラージュよ、千代。
「ひ、久しぶり!よ……よう兄さん!帰ってくるならちゃんと連絡してねっていつも言ってるのに、本当にいつも急なんだから!」
咄嗟に作った笑顔は果たして引きつってないかな。
ぎこちなさしかないそのセリフに冷や汗が垂れる。
そんな私と嘉さんを交互に視線が動いていく。
なんだそういう事かと納得してくれたのか、少し嘉さんと私の間に道を作ってくれる。
今だ!と思った瞬間嘉さんの手を掴んで、グイッと引っ張り走り出す。
「おっおい……!」
嘉さんが必死に抵抗しようとするけれど、させるものか。
学校まで通えなくなったら私が困るんだから!!!
ひーちゃんの姿を見つけて大きな声で叫ぶ。
「ひーちゃんごめん!!ちょっと、急用できたから先に帰るね!!ごめんまた明日!!」
キョトンとしたひーちゃんにヒラヒラと手を振りながら、嘉さんを連れて走り出す。
「童っ転ぶぞ!」
「転びません!!黙って着いてきてください!!」
ピシャリと言い放つと、抵抗する事をやめた嘉さんに一つ頷くとほとんど使うことのない細い道へと進む。
「……目立たないようにしたかったんだろうけど、逆に目立ってるぞ。千代」
正門の前でひーちゃんがそういうのも知らずに。