お稲荷様のお呼びです!


歪んだ景色を破るように通り抜けると、夕焼けに染まり始めた空が広がっていた。


澄んだ空気がひやりとして気持ちいい。


頬を掠める何かを目で追うと、綺麗な嘉さんの銀髪だった。


いつの間にか普段の姿に戻っていて、狐耳がピクピクと周囲の音を捉えている。



「……気配が何もないな」



呟いたままじっと一点を見つめる嘉さんに合わせるように、私もその方向を見る。


見えたものに対して焦りしか湧き出てこない。



「ちょっと!!嘉さんなんで学校に戻ってるんですか!!!」



ついさっきそこで私は勉強して、嘉さんがいてすぐさま家に連れて帰ろうとしたのに。


本来のその格好で、その上空まで飛んでる。


誰かに見られたらとんでもない事になる。



「心配する必要はない。あの道からどこかへ飛ぶと俺達の姿は実態を持たないようになる」


「つまり?」


「姿は誰にも見えない」


「本当に?」


「疑いが強い奴だな……なら試してやろう」



そう言って一気に高度を下げて学校へと向かっていく。


賑わう正門を通り抜けて、生徒玄関の前へとたどり着く。


ふわりと降ろされて、嘉さんの後ろに隠れる。


いや、ここ隠れちゃダメ??


私が嘉さん隠さなきゃ???




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