お稲荷様のお呼びです!
クンクンと匂いを嗅いで、階段の上を見上げた。
特別棟のこの階段は、割と部活中の子達の声で賑わっている。
ある一点を穴が開くんじゃないかって程、じっと見つめ嘉さんが眉間にしわを寄せた。
もしかしてそこにかなりの妖が……!?
足に力を入れて構えて、嘉さんの動きに合わせられるように整える。
「なんだこの甘ったるい匂いは……!」
「そんなにヤバい妖なんですか」
「いや、これは……菓子だな」
そっ、そっち?!
構えていた体制ががくっと崩れる。
1階特別棟の隅にある調理室で家庭科部がお菓子作りをしているのか、甘い優しい香りがそっと漂う。
そっちに気を取られていると、嘉さんは階段を登って上へと進んでいた。
追いかけるように私も階段を登り、すれ違う生徒達を眺めた。
特に変わった様子はなくて、いつも通りの風景が広がってるだけ。
本当にこんな場所に妖がいるの?
興味本位で学校に来たかっただけとかだったら、本当に家に帰ったら伽耶ちゃんに説教して貰わなきゃ。
「童」
少し先で嘉さんがこちらを見ずに私のことを呼ぶ。
嘉さんの元へと駆け寄ろうとする前に、嘉さんが片手を横に上げ止まれの合図を出した。
ありがたいことにこの3階へと続く階段は、どの部活も使ってない。