お稲荷様のお呼びです!
ゆっくりと体を起こし、残った力で伊鞠くんを抱え直す。
一つの動作をするだけで、意識が飛んでいってしまうのではないかと思うほど目の前に広がるその光景に全てを持っていかれそうな気がした。
感じる視線に首をゆっくりと上げると、透き通るような白銀の瞳に吸い込まれそうになる。
とぐろを巻いた大きな体は一体どこまで続いているのか。
鏡のように反射するほど綺麗に輝く鱗に、立派な角。
なんて……なんて、綺麗な龍なんだろう。
――そう、私の目の前に舞い降りてきたのは一匹の龍だった。
前だったら受け止められない存在だったのに、今じゃすんなりとその存在を受け入れている。
そんな龍のあまりの美しさに、息をするのも忘れてしまう。
『そう驚くな、白憐の血を受け継ぐ者よ』
凛としたその声にはっとすると、その龍はぐぐっと顔をこちらへ近づけてきた。
巫女という言葉に、小さく頷くと龍が笑ったような気がした。
額ギリギリの所まで顔を近づけて来たかと思えば、すんと私の匂いを嗅いだ。
その身を動かす度に、綺麗な音色が奏でられる。