お稲荷様のお呼びです!


あまりの近さに驚きを隠せず、体は硬直してしまった。

でも不思議と恐怖はない。

むしろ、この空気にこの感じ……知っている。

ハッキリとした記憶はないけれど、体はこの感覚を覚えている。

懐かしいこの感じに心臓が踊り、血が騒ぎ出す。


『この瞳に映る其方(ソナタ)も、桜花(オウカ)の瞳であるその目はしっかりと映る』

「……あの」


振り絞った声はどこかかすれてはいたけれど、きちんと龍には届いたようだ。

なんだ、と返事を返してくれ、そっと私の目線の高さに視線を合わせた。

その仕草さえも懐かしく感じるのは、一体どうしてなんだろう。

この暖かい気持ちに、胸が少し苦しい。


「あなたは……」


『其方の友とでも言っておこう』


「友達……?」


『ああ。それとも、こんな大きな友となると迷惑か?』


首を横に振ると、嬉しそうにたてがみを揺らした。





< 201 / 253 >

この作品をシェア

pagetop