お稲荷様のお呼びです!


周りを見渡し自分のいる場所を確認するけど、分かりっこない。


でも人がいたんだし、帰れないってことはないからまず一安心。


夕ご飯までには帰るようにして――


色々頭の中で考えてたその時。


ぐいっと何かに引き戻されるようなそんな感覚。


ズルッと落ちた鞄が宙を舞い、そのまま体は後ろに倒れていく。


あ……っと漏れた声と共に何かフワフワしたものに体を預けた。


訳が分からずにキョトンとしていると、さっきの彼の顔がすぐ横にあった。



「誰が勝手に帰っていいと言った。まだ済ませてなかろう」



小さくため息をつかれたけど、よく分からず首を傾げるしかなくて。


というか、このフワフワしたのは一体……


じっとフワフワのソレを見つめていると、またグラッと視界が揺れた。



「わっ」



驚きの声をあげて、倒れると思った。


でも思っていた痛みがやってこない。


肩に感じるその感覚。


あのフワフワしていたものは消え、私を支えてくれていたのは白いスラッとした綺麗な手。


ゆっくりと上を見上げれば、あの美しい顔。


覗かれるように見つめられて、どうしていいか分かんなくて固まるしかない。



「あ、あの……」



恐る恐る口を開き小さく身じろぐ。


でも逃がすものかと支える手に力が加わる。




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