お稲荷様のお呼びです!
一体この状況は何なんだろう……
まだ済ませてないって撮影のこと?
手伝えって事なの??
でも私のスマホは今は言うこと聞かないし……
「童……諱(いみな)は」
「え?」
よく分からない単語が出てきて、抜けた声が漏れた。
いみな??
というか、わっぱってなに?
私のことを言ってるの?
そんな私の反応が面白くないのか、彼の表情がむっとする。
じょ、状況が掴めない……どうしよう。
この人私に何を訪ねようとしてるのかな……
「お前の口は飾り物か?」
「あ、あの……」
「名を名乗れと言ってるんだ」
な、名前……?
首を傾げるよりも、彼の眉間のしわが一つの増えた。
それに慌てて口を開く。
「あ、東 千代……です」
「……千代」
「は、はい」
コクコクと頷くけど、彼の表情は柔がない。
嘘偽りのない私の本名なんだけど……何か疑われてる?
じっと見つめられる視線がどうも落ち着かない。
きゅっと口を閉じて斜め下を見た。
サァっと吹き抜けていく風が髪を揺らす。
細かい砂埃が舞い、きゅっと目を閉じる。
すると支えられていた感覚が消えていく。