お稲荷様のお呼びです!


風が止んで、そっと目を開ければ彼は目の前にいた。


綺麗な瞳で私をじっと見つめ、口を開いた。



「童、今日から我に遣えよ」



突然言われたその言葉に、目を丸くする。


つ、遣え……よ?


状況が掴めないまま、再びサァっと風が私達の間を通り抜けていく。


すると、パラパラと何かが崩れ落ちるような微かな音が響く。


彼から見つめられていることを忘れて、驚きながら周りを見渡した。


光る破片が景色と共に崩れ落ちていく。


さっきまでの森がどんどんと拓けていく。


あれだけ古びた祠も綺麗な色彩を身にまとっていく。

< 25 / 253 >

この作品をシェア

pagetop