お稲荷様のお呼びです!
いつも通りの歩き慣れた帰り道。
いつも通りの毎日。
何かに期待するわけでもなく、17になってもこれといって夢もない。
そんな私――東 千代(アズマ チヨ)は突然のにわか雨に小さなため息を漏らした。
いい事ないかな、なんて小さな欲望抱くといつもこれだ。
今日の天気予報晴れだったのに、急な土砂降り。
古い駄菓子屋さんの軒先にお邪魔して雨宿りをしながら、雨模様を伺う。
折りたたみ傘なんて持ってきてる訳もなくて、微かに濡れた制服と髪。
ぺたっとくっつくこの感じが少し気持ち悪い。
「止まないかなあ……」
ぽつりと呟いた言葉は灰色の空にすうっと吸い込まれていく。
ガサガサと鞄からスマホを取り出して、誰かに助けを呼ぼうと電源を入れ――
「……つかない」
何度ボタンを押しても、画面は真っ暗なまま。
機嫌を損ねたようにぴくりとも動かない。
放課後に教室で開いた時は何ともなく動いたのに。
二度目のため息と共にスマホを鞄にしまう。