水面の月
診療所の中は静かで、廊下を歩く俺たちの足音が不気味に響く。
まだ明るいというのに、暗くて重苦しい空気。
気味が悪い……。
それが俺の感じた、この診療所の第一印象。
目の前を歩く花谷が、ある病室の前で足を止めて振り返る。
「ここが貴方のお部屋ですよ。」
扉を開けると、まず目に入ったのは大きな窓ガラス。
その窓の向こう側には、先ほど母が話していた湖が広がっていた。
今さっきまで感じていた不気味さを忘れて、窓の向こうに広がる広大な景色に思わず見とれていた。
「倉持さんは、景色を眺めることが好きなの?」
花谷は俺の隣に来て、同じように窓の外の景色を眺める。
そして、柔らかい笑顔をこちらに向けてきて、俺は思わず本音を洩らした。
「窓の外を眺めると、何だか楽しいんだ…。」
あの山の向こうには何があるんだろうとか、あの湖にはどんな魚がいるんだろうとか、考えると楽しいんだ。
全部話したら、何だか気恥ずかしくて、慌てて顔を背けた。
「ごめん、暗いだろ、俺。」
「そんなことないよ!」
いきなり怒鳴られて、驚いて花谷の顔を見ると、ほんわかしているイメージとは想像できない険しい顔をしていた。
まだ明るいというのに、暗くて重苦しい空気。
気味が悪い……。
それが俺の感じた、この診療所の第一印象。
目の前を歩く花谷が、ある病室の前で足を止めて振り返る。
「ここが貴方のお部屋ですよ。」
扉を開けると、まず目に入ったのは大きな窓ガラス。
その窓の向こう側には、先ほど母が話していた湖が広がっていた。
今さっきまで感じていた不気味さを忘れて、窓の向こうに広がる広大な景色に思わず見とれていた。
「倉持さんは、景色を眺めることが好きなの?」
花谷は俺の隣に来て、同じように窓の外の景色を眺める。
そして、柔らかい笑顔をこちらに向けてきて、俺は思わず本音を洩らした。
「窓の外を眺めると、何だか楽しいんだ…。」
あの山の向こうには何があるんだろうとか、あの湖にはどんな魚がいるんだろうとか、考えると楽しいんだ。
全部話したら、何だか気恥ずかしくて、慌てて顔を背けた。
「ごめん、暗いだろ、俺。」
「そんなことないよ!」
いきなり怒鳴られて、驚いて花谷の顔を見ると、ほんわかしているイメージとは想像できない険しい顔をしていた。