ワケありルームシェア
5限目。
前で長々と何かを説明する先生。
何言っているのかわからない。
理解できないんじゃなくて、理解出来てるからもっと簡単な方法がわかるだけ。
「じゃあ、この問題が解ける人。哀川。解いてみろ。」
「は、はい!」
数学の時間。
結構な応用問題に当てられる哀川さん。
_______________カッカッカッ。
「正解だ。ノートはとっておけよ。」
ん?
ノートは取っておけ?
ノートは普通はとるもんでしょ。
「はい、すみません。」
哀川さんのノートを盗み見る。
そのノートには何も書いてない。
板書も、途中式やその答えさえも書いてない。
_______________今日は聞くことがたくさんだ。
全部家に帰ってから解決したらいい。
窓際の席。
おおきな入道雲。
たくさんの蝉の声。
「…………眠い。」
蝉の鳴き声が大きな渦に飲み込まれていくように、遠ざかっていくように。
僕の意識は気がついたらどこか別の場所に行ってしまった。