戻らないラブストーリー。
3月2日


「はぁ…」


私、桜井 春華(さくらい はるか)は何度目かの大きなため息をはく


ただボーっと窓の外を見てるだけなのに涙が出そうになる

何も考えてないはずなのに頭の中に過ぎるのはいつもキミのこと


大好きだっただけあって、ふっきれるのは簡単じゃなさそうだな、と1人で苦笑する


あ〜…別れなければよかった…

なんて今更もう遅い


早くふっきれなきゃ

早く忘れなきゃ


…でも、そんな簡単に忘れられたら人間苦労はしない


「はぁ…ダメだ…」

「何がダメなの?」


声のした方を振り向くとそこにいたのは雪村 凌(ゆきむら りょう)

彼は私の幼なじみであり、よき相談相手


そして、凌には秘密だが、この人は一応私の初恋の人

まぁ、でも、その初恋はあっけなく終わったんだけどね

え?なんであっけなく終わっちゃったのかって?

…それはまだ秘密

そのうち分かるよ


「なに?ほんと大丈夫?また誰かとケンカでもしたの?」


そんなことはお構い無しにニヤニヤしながら私のおでこを突っつく凌

「凌には関係ないでしょ」と私は凌の手を払う

不貞腐れたように一瞬頬を膨らませた凌はハッとして再びニヤニヤと私の顔をのぞき込む


「あ!わかった、どうせ優とケンカしたんでしょ〜?」

「…!」

「おっ図星?」


優……


それは、今1番聞きたくなかった名前だった

1番思い出したくない名前だった


私は黙って席を立つ


「凌、お願いだから、その名前、しばらく口に出さないで」


大嫌いで大好きだったその名前を


私は凌を振り返ることなく教室をあとにした

凌の前で涙を見せるわけにはいかないからだ


少し廊下を歩くと裏庭に抜けれる小さなドアがある

私はそこでうずくまり泣いた


「優……私……」


あなたのこと……


忘れられる日がくるのかな……?
< 3 / 5 >

この作品をシェア

pagetop