無気力王子とじれ甘同居。
「真子さん感謝っ!!」
「俺には…」
「ん〜…ちょっと」
「なんでだよ。…まぁいいや。いくぞ」
ギュッ
────っ?!
突然、大貴が私の手を掴まえて前を歩きだす。
いや、ちょっと手!
なんで?!
「へ?!…ちょ、大貴…」
人の多さで、私のその控えめな声は前を歩く大貴には聞こえない。
いや、別に手なんか繋がなくたって…。
やっぱり、今日の大貴ちょっとおかしいかも。
厳密には、最近、大貴はおかしい。
今までの大貴ならお願いしたって、クレープ屋さんなんて連れて行ってくれなかったし。
何考えているんだろう。
『夫婦じゃーん』
クラスの子達にそんなこと言われたから、私が考えすぎなだけなのかな?
第一、私も大貴もそんな気持ち一切…。
『幼馴染みって結局なんだかんだあって付き合ったりしない?』
いやいやいや、ないないない。
あいちゃんのセリフを思い出して慌てて首を振る。
「着いた。20分待ちか…って、何、百面相してんの祐実」
手が離されたと思ったら、 急に大貴が立ち止まって、気持ち悪そうに私の顔を見る。
ほらね…こんな顔して私を見るんだ。
絶対そんな風に私のこと見てないって。
「べっつに〜」
「変なの」
私たちはそう言い合いながら、行列に並んだ。