無気力王子とじれ甘同居。









あのあと、大貴は『なんでもねー』と言ってからまるで何もなかったかのように、突然カラオケに行こうと言い出して、それから3時間後、そのまま私をアパートまで送ってくれた。



そして…私が見ていなかったすきに買ったみたいで…。



私は左手首にある細身のチェーンを右の指で撫でる。


大貴は、今アパートの階段の下で、私にあのブレスレットをくれた。


早めの誕生日プレゼントだ。なんていって。
誕生日プレゼントなんて、いつもコンビニのチキンだったのに。


大貴、あの時なんでもねーって言ったけど、確かに聞こえた。


『だから、こうして連れてきてんじゃん』


あの言葉の意味はなんだったんだろうか。


『でも全然気付いてくれねんだよ』


大貴の意味深な言葉たちが脳裏を駆け巡る。



玄関のドアをバタンと閉めてからも、私は靴を脱がずに考え込む。



…大貴の好きな人って。




────ガンッ



へ?!


リビングから物音が聞こえて、ハッとする。



え…。


どうして?


今日の夕方から松下くんはバイトだからいないはず…。



えっ…ど、泥棒?!


どうしよどうしよどうしよ!


私は急いで靴を脱ぐと早歩きで、リビングへと向かう。


午後7時前。


リビングの電気はもちろんついてなくて暗い。


泥棒…いるのかな?


不安になりながら意を決して、私はドアのすぐ横にある電気スイッチをパチンとつけてから、恐る恐る部屋を見渡した。



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