無気力王子とじれ甘同居。
*
*
「…祐実、気分悪いの?」
帰りの電車の中、松下くんが私の顔を覗き込みながらそう聞いてきた。
「…んー…なんか食べすぎかな…ちょっと寝るね」
お腹が痛いわけでも気分が悪いわけでも眠たいわけでもない。
ただ。
今はいつものテンションで松下くんと接することができない。
なんでだろう。
あの人…綺麗な人だったな…。
松下くん、きっと今も彼女のことが好きなんだろうな。
希和さんの背中を見つめる松下くんの横顔は、すごく嬉しそうな笑顔だった。
松下くんにとって、女子とのスキンシップはさほど重要じゃないんだ。
キスも間接キスも。
あーあ。
なんだろうこの気持ち。
これじゃまるで私、
松下くんのこと─────。
「好きっ!」
っ?!
「俺そのアイドルめっちゃ好き!」
前に座る中学生男子が騒いでいる。
あぁ────。
そう、なのかな─────?