無気力王子とじれ甘同居。
「…そっか、だから松下くん、授業中はいつも寝ていたんだね。バイトで疲れてるんだとばかり…」
俺について来てくれた祐実は、いつも俺が登る木の幹に寄りかかり月を見ながらそう言った。
格好はスウェットパンツとちょっと緩めのパーカーで、手先まで隠れている袖が、また俺の胸を鳴らす。
月明かりに照らされた祐実のその横顔がすげー可愛くて、思わず目をそらす。
「松下くんにとって、希和さんは特別な人なんだね…」
「まぁ…」
特別な人には変わりがない。
だけどさ、
「だったら余計ダメじゃん」
「え…?」
少し怒った声の祐実に驚く。
「大事にしなきゃダメじゃん。平気で…私に触れたら…ダメだよ」
あぁ、こいつは。
やっぱり何もわかってなかったんだ。
「俺言ったよね?希和のことは昔好きだったって」
「へ?」
「昔。俺にとってその感情はもう過去の話ってことなんだよ」
俺はそう言って、彼女の頬にまた触れた。