無気力王子とじれ甘同居。
「一個くれよ!」
「……」
「…な〜松下ってば〜」
「……」
学校での松下くんは安定して無口。
今日の午前の授業もずっと寝ていた。
さすがにそんな松下くんが、私のことをぽろっと話しちゃうようなことしないよね…。
「何にも言わね〜ってことは〜」
横目で松下くんとその周りの男子たちを見る。
男子の1人が松下くんの弁当に指を入れてつまみ食いしようとした瞬間─────。
「だめ」
─────っ?!
松下くんがそう言った。
「…え、なに。松下ハンバーグ好きなの?」
ハンバーグ…。
昨日の夕飯のあまりを弁当に入れたんだっけ。
「うん。好き」
─────っ?!
松下くんのその声に、クラスの女子たちが小さくキャーキャー喜ぶ。
「好きだって」
「可愛いな松下くん」
なんて、みんな騒いでる。
でも、そんな彼女たちよりも────。
私の方が何十倍も心の中で喜んだ。
松下くん…ハンバーグ好きだったんだ。
友達がつまもうとしたのを「だめ」と止めた松下くんに
ほんの少し─────
キュンとした。