跳んで気になる恋の虫
取り出した携帯の画面を見れば、久しぶりに見るカレシの名前。
「も、もしもし」
「ナミ?」
そっけない声。
「うん」
私は、なんとなく虫屋に背中を向けて話をした。
「祭りの件だけど、用事ができて行けなくなった」
「え?なんで?お祭りに行ってくれるっていうからこうして……」
「はあ?彼女らしいこと何も出来ねえくせに、自分の欲求ばっかり言うんじゃねーよ。祭りに行ってほしいなら、いい加減にキスぐらいさせろ」
キスという言葉に反応して、変な汗が出てくる。
私は、カレシからのキスを何度も拒んでいた。
「……だって……」
初めてのキスは、もっとこうなんていうか、こんなんじゃないっていうか……。
というより、この人とキスをすることに、体が完全拒否してしまうのだから仕方がない。
「そうやってごちゃごちゃ言われるのって、めんどくさいんだよ」
ブツッと電話が切れた。
短い短い電話だった。