跳んで気になる恋の虫
もう、なんなの虫屋。
私の勘違いじゃないの。
私って、めちゃくちゃバカ。
「あははは!あのね、私の名前もナミっていうの。名前を呼ばれてびっくりしたんだからーー!だって、私のこと何も知らないくせに、いきなり好きとか言うからさーー」
私は、虫屋の前で思いっきり笑った。
こんなに笑ったのは久しぶりで、お腹が痛くなるほど。
「……知ってますよ、飛島さんのこと。高跳びしてる姿をたまに見かけます」
虫屋の思いがけない言葉に、今度は笑顔が引っ込んだ。
「あ、それは、どうも……」
「飛島さんがバッタだったら、めちゃくちゃモテると思います」
「へっ?ちょ、バッタだったらって……」
自分がバッタになった姿を想像すると可笑しくなって、引っ込んだ笑いがこみあげてくる。
「……これでも俺、すごく褒めてるんですけど」
「ごめんごめん、だって虫に例えられるなんて初めてだったから」