跳んで気になる恋の虫
「……まあ、いいです別に。虫だったら、元気にする方法はわかるんですが、人間を元気にする方法はよくわかりませんし」
「……えっ?」
いつも表情を変えない虫屋が、すごく困った顔をしながら言っているのがわかる。
ああ、虫屋って優しいんだ。
私を元気づけてくれてたんだ。
「ありがとう」
「いえ、別に……はい」
ふわっとミカンの香りがする風がふくと、どこからともなくチョウが飛んでくる。
「手を開いてください」
虫屋に言われて手を開く。
虫屋がそこに濡れた綿を置く。
すると、チョウがふわっと舞い降りてくる。
まるで魔法みたいだった。