跳んで気になる恋の虫
「これは……ナミ?」
私が聞くと、虫屋は首を振った。
「いいえ、違います。大きさも違うし、模様も少し違います。同じナミアゲハだけれど、俺のナミじゃない」
……俺のナミだって。
チョウのことだとわかってるけど、なんとなくドキッとしてしまう。
「へえ、みんな一緒なのかと思ってた」
確かに、よくよく見たら、さっきのチョウとは模様が少し違うような気がする。
どこが違うのか、はっきりとは言えないけれど、色もちょっと違うような……。
「一匹一匹違います。ちゃんと個性があります。目立たないとペアにはなれませんから、虫たちは頑張ってます」
「……そっか……」
なんか、私とは正反対だな。
私は、みんなと同じように、みんなに嫌われないように、そんなことばっかり考えているような気がする。
そんな私の心が聞こえたかのように、虫屋が言った。
「人間だけです。みんな違うのに同じにしたがるのは」