跳んで気になる恋の虫


「同じにしたがるのだって理由があるんだよ」

私は、自分のしてきたことを正当化しようとして、虫屋に言いかえした。

虫屋は、まっすぐな瞳で私を見ながら聞き返してくる。

「どんな理由ですか?」


……どんなって聞かれても、言葉にするのは難しい。楽だから?安心だから?一人になるのが怖いから?


「む……桐谷は……」

「虫屋でいいですよ。俺はそう呼ばれる方が好きだから」

「……えっ?」

桐谷を嘲笑って言う『虫屋』の方がいいの?
なんで?

「だって俺、虫好きだから。そう呼ばれてたら、同じように虫が好きな人に気づいてもらえる確率も上がりますし」

虫屋って、なんかすごい。

自分をちゃんと持ってて、自分のしてることに自信と誇りを持ってるんだ。
だから、周りが何を言っても気にせず前向きに考えられるんだ。

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