跳んで気になる恋の虫


「飛島さんの手から逃げずに休んでいるチョウを見て、この人ならって思ったんです。俺の虫捕りにつきあってください」

「あ、あーー、虫捕り!そっか、なるほど。つきあうって、一緒に行くってことね」


なんかもう、虫屋にドキドキして損した。

虫屋の頭の中は、虫のことでいっぱいで、『好き』も『つきあう』も人間同士の恋愛に使う言葉として認識されてないんだなきっと。

だったら私も余計なことを考えなくて済む。


「いいよ。行こう、虫捕り」

虫は嫌いじゃないし、周りのことなんか何も考えず、素直に楽しそうだと思って返事をした。

虫屋とその場で約束をして、私はまた練習に戻った。



明日から夏休み。

ずっとこのまま晴れてほしいと、空を見上げて思った。



< 18 / 53 >

この作品をシェア

pagetop