跳んで気になる恋の虫
「飛島さんの手から逃げずに休んでいるチョウを見て、この人ならって思ったんです。俺の虫捕りにつきあってください」
「あ、あーー、虫捕り!そっか、なるほど。つきあうって、一緒に行くってことね」
なんかもう、虫屋にドキドキして損した。
虫屋の頭の中は、虫のことでいっぱいで、『好き』も『つきあう』も人間同士の恋愛に使う言葉として認識されてないんだなきっと。
だったら私も余計なことを考えなくて済む。
「いいよ。行こう、虫捕り」
虫は嫌いじゃないし、周りのことなんか何も考えず、素直に楽しそうだと思って返事をした。
虫屋とその場で約束をして、私はまた練習に戻った。
明日から夏休み。
ずっとこのまま晴れてほしいと、空を見上げて思った。