跳んで気になる恋の虫
跳びたい私と気になるキミ
夏休みになって、3日経った午後3時。
部活を終えて向かった先は、虫屋と待ち合わせた神社。
ここは、大会の日にお祭りが行われる場所。
自転車を止めて、セミの声に支配された長い石段を上ると、高い木を見上げている虫屋がいた。
「虫屋」
私が呼ぶと、虫屋がゆっくり振り向く。
「ね、あそこを見てください」
虫屋が私を呼んで、木の上の方を指差した。
「めちゃくちゃ大きいセミがいるんです。あそこまで大きいのは、なかなか会えないから」
「え?どこ?」
目を凝らしても、セミの姿を全く見つけられない。
「わかりませんか?じゃあ、ゆっくり俺の指の先を辿っていってください」
虫屋は木の幹に触れ、指先をピンと伸ばした。
私は、半袖のシャツから見える虫屋の肩の辺りから、指先に向かってゆっくり視線を辿っていく。
……虫屋って、意外と筋肉あるんだな。それに、チョウを見せてもらったときにも思ったけど、指が長くてきれい。
「見つかりました?」
「あ、ちょ、まだ……」
やだ、私、何考えてるんだろ?
自分の頭をポンと叩いてリセットする。
もう一度、虫屋の指先から視線をどんどん上に向けていくと……いたよ、すごいでっかいセミが!
「いたっ!虫屋、いたっ!」