跳んで気になる恋の虫
……ドキン。
不思議なくらい、胸がドキドキする。
「9階ぐらいまで跳べたら絶対優勝できるから、バッタはどうやって跳ぶか教えてよ、虫屋」
「飛島さんはバッタよりチョウです。名前もナミアゲハと同じナミですし」
「チョウも高く跳べるの?」
虫屋との虫トークがこんなに楽しいものだったとは。
話したいこと、聞きたいことが次から次へと溢れてくる。
「跳べます。オオカバマダラというチョウは、3000メートルを超える山に越冬しに行くんですよ」
「3000メートル?どうやって?」
「風に乗るんです。ポンと踏み出したら、風を捕まえて高く飛ぶんです」
風を捕まえて跳ぶ……。
できるだろうか、私に。
「俺のナミは、風を捕まえるのが上手いんですよ。すごく高く跳ぶんです、だから……」
「私は虫屋のナミじゃないけど」
あれ?なんで私、こんな嫌味な返事をしてるんだろ?