跳んで気になる恋の虫
「あ、いや、そう言う意味じゃないです。きっと飛島さんなら、俺のナミみたいに……」
虫屋が俺のナミと言えば言うほど、どこからともなく闘志が湧いてくる。
「そんなに言うなら、その葉っぱを一枚ちょうだいよ。虫屋のナミが好きな葉っぱなんでしょ?だったら、虫屋のナミになって、絶対跳んでやる!」
私は、虫屋が手に持っているミカンの枝から葉っぱを1枚取って、ポケットに入れた。
集合時間も迫ってきていたので、もうそろそろここを出なければいけない。
「じゃ、またね」
私は虫屋にまたねと言った。
この前は言えなかった言葉が、自然に口からこぼれる。
私の中で虫屋は、いつの間にかまたねを言いたくなる人になっていた。
石段を駆け下りて自転車に跨り、ポケットをポンと叩いてからペダルを踏み込んだ。
今日は、頭を叩いて気持ちをリセットしないでおこうと思った。